線は映し、影は綴る

“Fracto-graph”は彼のふたつのシリーズ”The Garden”と”Trace”を分析、発展させ、両シリーズの間を行ったり来たりしながら作り上げるシリーズです。
“The Garden”、この写真シリーズでモチーフとなったジャングルや森の中の自然の植物、そしてその土台となった建築物とその装飾、これらをミクロ的(微視的)またはマクロ的(巨視的)に見てみると、私たちはそこにフラクタルな構造とその形状の中に続く無限の奥行きを感じるはずです。
“Fracto-graph”では、彼はそのフラクタルと不思議な奥行きに集点あて、写真ではなく絵画として、その写真の細部のフラクタルな形、震えるような光の反射、変化する影の形状を鉛筆とアクリル絵の具でで紙に描き移し、その絵画の上に、さらにコンパスや定規などの道具を使い、別次元の人工的で抽象的な無数の線を描き加えていく手法をとっています。
そのアプローチの仕方はまるで”The Garden”と”Trace”の両方のシリーズを鏡で映し出しているとも言えます。おそらく写真の中の深い森やジャングルに分け入り、映し出すその鏡は平らな鏡ではなく、歪んだ鏡、凹面鏡や凸面鏡なのでしょう。
そしてさらに映し出された人工的な多数の線のドローイングが、作品の奥行きを惑わし奇妙な2次元空間へと導いて行くのです。新作では金や銀の金属色も多用されています。これを彼は反射色と呼んでいますが、この反射がもうひとつの奥行きを作りだすでしょう。
(2014上海Vanguard Gallery- Aki Lumi個展『線は映し、影は綴る』プレスリリースより)

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